📱【防災シリーズ12】災害時に命をつなぐ通信手段【スマートフォン・トランシーバー・無線機・衛星電話・GPSトラッカー】🔊📡
はじめに:災害時の通信の重要性 💬
大規模災害が発生すると、最初に失われるのは通信インフラです。東日本大震災では多くの携帯電話基地局が機能を停止し、被災地との連絡が途絶えました。災害時における正確な情報収集と伝達は、生命を守るために不可欠です。
「災害が起きた時、あなたは家族とどうやって連絡を取りますか?」
この問いに明確な答えを持っていることが、防災の第一歩になります。本記事では、災害時に役立つ通信機器について解説します。

目次
スマートフォンの緊急SOS機能と衛星通信 📱🛰️
最も身近な通信機器、スマートフォン。特にiPhoneとAndroidには強力な緊急通信機能が搭載されています。これらの機能を知っておくことで、専用機器がなくても緊急時の通信手段を確保できるかもしれません。
🔸 iPhoneの緊急SOS機能(全モデル対応)
iPhoneには緊急SOS機能が標準搭載されています。この機能を使えば、電波が入る場合、緊急時にすばやく救急サービスに連絡できます。
緊急SOSの起動方法
- iPhone 8以降の場合:
- サイドボタンと音量ボタンのどちらかを同時に長押しします
- 「緊急通報」スライダーが表示されたら、右にスワイプして緊急通報を開始
- または「自動通報」を有効にしている場合、ボタン長押しを続けると3秒のカウントダウン後に自動で通報が開始されます
- iPhone 7以前の場合:
- サイドボタン(またはトップボタン)を素早く5回押します
- 「緊急通報」スライダーが表示されたら、右にスワイプして緊急通報を開始
自動発信機能の設定方法
- 「設定」アプリを開きます
- 「緊急SOS」をタップします
- 「自動通報」をオンにすると、ボタンを長押しした後、3秒のカウントダウンが始まり、自動的に緊急通報が発信されます
- オプションで「5回押しで実行」を有効にすると、サイドボタンを5回押すだけで緊急SOSを起動できます(iPhone 8以降の場合)
緊急SOSの特徴
- 緊急連絡先として登録した人に現在位置が自動送信されます
- 医療IDが設定されていれば、緊急医療情報が共有されます
- Face IDやTouch IDが一時的に無効になり、パスコードのみでロック解除可能になります
- 位置情報が変わった場合、緊急連絡先に更新情報が送信されます
🔸 iPhoneの衛星経由緊急SOS(iPhone 14以降対応)
iPhone 14以降では、圏外でも衛星を介して緊急サービスにテキストメッセージを送信できる「緊急SOSvia衛星」機能が利用可能です。この機能は2024年7月にiOS 17.6のアップデートで日本でも利用可能になりました。
衛星経由の緊急SOSの特徴
- 携帯電話の電波やWi-Fiが届かない場所でも緊急サービスに連絡可能
- 日本の緊急連絡先(110番、118番、119番)にも対応
- iPhone 14以降を購入すると、アクティベーションから2年間無料で利用可能
- 日本語を含む複数の言語に対応
- iOS 18以降では通常のiMessageやSMSも衛星経由で送信可能(緊急時以外も)
衛星経由の緊急SOSの使い方
- 通常の緊急通報を試みます(110番や119番に電話)
- 圏外の場合、「衛星経由で緊急テキスト」オプションが表示されます
- 画面の指示に従って緊急状況についての質問に答えます
- スマートフォンを適切な方向に向けて衛星に接続します
- 接続が確立されると、緊急サービスにメッセージが送信されます
事前の準備と注意点
- 「設定」→「緊急SOS」→「デモを試す」から、衛星接続のデモを試せます
- 衛星接続には空が見える屋外にいる必要があります
- 理想的な条件下でも、メッセージ送信に30秒以上かかることがあります
- 木々や建物など障害物があると接続が困難または不可能になります
- わずかでも電波がある場合、通常の通信が優先されるため、必要に応じて機内モードを使うことがあります
- 中国本土・香港・マカオ・アルメニア・ベラルーシ・キルギスタン・カザフスタン・ロシアで購入されたiPhoneでは利用できません
🔸 Androidの緊急SOS機能
Androidスマートフォンにも緊急SOS機能が搭載されていますが、メーカーやモデルによって操作方法や機能が異なります。
Google Pixelの緊急SOS機能

- 電源ボタンを5回素早く押すと緊急SOSが起動します
- 「設定」→「安全と緊急」→「緊急SOS」から設定できます
- 主な機能:
- 緊急サービスへの自動発信
- アラームサウンドの再生(オプション)
- 緊急連絡先への位置情報の共有
- 緊急動画録画(特定のモデルのみ)
Samsung Galaxyの緊急SOS機能

- 電源ボタンを3回素早く押すとSOSメッセージが送信されます
- 「設定」→「詳細設定」→「SOSメッセージを送信」から設定できます
- 主な機能:
- 緊急連絡先への自動メッセージ送信
- GPS位置情報の共有
- フロントカメラとリアカメラの写真を添付
- 5秒間の音声録音を添付
- 緊急サービスへの直接通報(一部のモデルや地域のみ)
その他のAndroidスマートフォン
多くのAndroidスマートフォンでは、「設定」アプリ内の「緊急」「安全」「SOS」などのキーワードで検索すると緊急SOS機能の設定が見つかります。
🔸 Pixel 9シリーズの衛星通信機能
Google Pixel 9シリーズには、iPhoneと同様に衛星通信機能が搭載されています。

- 圏外の場所で緊急通報(110番など)を発信しようとすると、衛星通信オプションが表示されます
- 衛星接続に成功すると、緊急サービスにテキストメッセージを送信できます
- Skylo社の衛星サービスを利用しており、一部の地域・国でのみ利用可能です
- iPhoneと同様に衛星通信には空が見える屋外環境が必要です
🔸 Starlinkの衛星通信サービス
SpaceX社が提供するStarlinkは、通常の衛星通信とは異なる「直接スマートフォンに接続できる」新しい衛星通信サービスを開発しています。
T-Mobile Starlinkサービス
- T-MobileとSpaceXが提携して開発中のサービスで、2025年7月に正式サービス開始予定
- 特別な端末やハードウェア変更なしに、既存のスマートフォンで利用可能
- 既に一部のユーザーにベータテストを提供中(無料)
- 開始当初はテキストメッセージのみをサポート(緊急通報911を含む)
- 将来的には写真共有、データ通信、音声通話にも対応予定
- T-Mobileの最上位プランには無料で含まれ、その他のプランでは月額15ドルで提供予定
Starlinkの緊急通信について
Starlinkは、SpaceX社のイーロン・マスクCEOが発表したように、世界中で緊急サービスへの接続を無料で提供することを計画しています。「誰かが支払いを忘れたり支払えなかったりして死亡するような状況は避けなければならない」という理念のもと、各国政府の承認を条件に、緊急通信サービスの無料提供を目指しています。
🔸 スマートフォンの緊急通信機能の限界
スマートフォンの緊急SOS機能は便利ですが、以下の制限や注意点があります:
- 電池寿命の問題:スマートフォンはバッテリーの持続時間が限られます
- 耐久性の問題:一般的なスマートフォンは耐衝撃性や防水性に限界があります
- 衛星通信の制限:建物内や障害物の多い場所では衛星との接続が困難です
- 対応地域の制限:衛星通信サービスは全ての国や地域で利用できるわけではありません
- 誤操作のリスク:緊急SOSの誤発信が発生する可能性があります
専門の緊急通信デバイス(PLB、EPIRB、衛星通信機など)と比較すると信頼性や耐久性は劣りますが、常に持ち歩くスマートフォンの緊急通信機能を知っておくことは、防災対策として非常に重要です。
🔸 実際の利用シーン
- 登山中に遭難した場合
- 車が山中で故障した場合
- 災害で通信インフラが壊滅した被災地にいる場合
- 海上で緊急事態が発生した場合
- 無人の森や砂漠などの僻地で通信が必要な場合
スマートフォンの緊急SOS機能や衛星通信機能は、専用の通信機器がなくても使える強力な緊急通信手段です。日頃から使い方を確認し、いざという時に備えておきましょう。
トランシーバー・無線機の選び方 📻
トランシーバーの基本と種類
トランシーバー(無線機)は、電波を使って直接通信できる機器です。携帯電話のように基地局を必要としないため、災害時の通信手段として非常に頼りになります。
🔸 種類別の特徴

1.特定小電力トランシーバー
・免許不要で誰でも使用可能
・通信距離:見通しの良い場所で約1〜3km
・価格帯:5,000円〜20,000円
・おすすめポイント:家族での使用に最適
おすすめ機種:【免許・資格不要】スタンダード 特定小電力トランシーバー FTH-214
2.業務用簡易無線機

・簡単な登録のみで使用可能(登録局)
・通信距離:見通しの良い場所で約5〜10km
・価格帯:30,000円〜100,000円
・おすすめポイント:地域の防災組織での利用に適している
おすすめ機種:デジタル簡易無線登録局ハイパワーデジタルトランシーバー

3. アマチュア無線機(HAM無線)
・資格(アマチュア無線技士)が必要
・通信距離:機種と周波数により様々(数十kmから世界中)
価格帯:10,000円〜100,000円以上
おすすめポイント:幅広い通信が可能、全国の無線家とのネットワークが活用できる。
おすすめ機種:アイコム IC-T10 144/430MHz デュアルバンド 5W
🔸 災害時に役立つ機能
- 防水・防塵機能:IP67以上の防水規格を持つ機種がおすすめ
- 長時間バッテリー:予備バッテリーも含めて最低24時間以上の稼働時間を確保
- スキャン機能:複数のチャンネルを自動的に確認できる機能
- 緊急アラート機能:緊急時に特定の信号を発信できる機能
🔸 おすすめの無線機
機種名 | 種類 | 特徴 | 価格目安 |
---|---|---|---|
アイコム IC-4310B | 特定小電力 | 防水・防塵、長時間バッテリー | 1台/8,000円〜 |
ケンウッド DEMITOS UBZ-LS20 | 特定小電力 | コンパクト、使いやすい | 1台/10,000円〜 |
アイコム IC-DPR4 | デジタル簡易無線 | クリアな音質、長距離通信可能 | 1台/30,000円〜 |
八重洲無線 FT-70D | アマチュア無線 | デジタル/アナログ両対応、堅牢な作り | 1台/28,000円〜 |
実際の災害での活用例
東日本大震災では、携帯電話網が使えない状況下でもアマチュア無線は機能し、多くの命が救われました。ボランティア無線家が集まって臨時の通信ネットワークを構築し、被災地の情報収集や救助要請の中継に大きく貢献したのです。
無線機の使用に際しては、日頃からの訓練が重要です。家族や地域でのコミュニケーションツールとして定期的に使用することで、いざという時にスムーズに活用できます。
衛星電話の種類と特徴 🛰️
衛星電話とは
衛星電話は、地上の通信インフラに頼らず、人工衛星を介して通信を行う電話システムです。大規模災害で地上の通信網が壊滅的な被害を受けた場合でも、衛星電話なら通信が可能です。
🔸 主要な衛星電話サービス
- イリジウム(Iridium)
- 66基の低軌道衛星によるグローバルカバレッジ
- 特徴:世界中どこでも使用可能、極地も含む
- 通話料:約100〜200円/分
- 端末価格:15万円〜30万円
- レンタル料:日額2,000円〜5,000円程度
- インマルサット(Inmarsat)
- 静止軌道衛星による広範囲カバー
- 特徴:安定した通信品質、データ通信も可能
- 通話料:約100〜150円/分
- 端末価格:10万円〜25万円
- レンタル料:日額1,500円〜4,000円程度
- スラーヤ(Thuraya)
- アジア・中東・ヨーロッパ・アフリカをカバー
- 特徴:携帯電話と衛星電話の両方の機能
- 通話料:約80〜150円/分
- 端末価格:8万円〜20万円
- レンタル料:日額1,200円〜3,000円程度
🔸 災害時の効果的な利用方法
- 通信計画の策定:誰が、何のために、どのように使用するかを事前に決める
- バッテリー管理:充電式のソーラーパネルなどのバックアップ電源を用意
- 通信の簡潔化:通話時間を短く保ち、必要な情報のみを伝える
- 定期通信テスト:月に一度は電源を入れてテスト通話を行う
🔸 衛星電話の制限と注意点
- 建物内での使用制限:衛星と直接通信するため、屋外か窓際での使用が基本
- 天候による影響:豪雨や濃い雲があると通信品質が低下する場合がある
- 初期設定の複雑さ:使用前に適切な設定やアンテナの向きが必要
- コスト:通常の携帯電話と比べて高額になるため、災害時専用として計画的に導入
東日本大震災での教訓
東日本大震災後の調査によると、災害医療チームが使用した通信機器の約23%が衛星電話でした。しかし、通信の不安定さや音声通話のみに限定されるなどの課題も明らかになりました。大規模災害時には、音声だけでなくデータ通信も含めた多様な情報の送受信が求められます。
GPSトラッカーの活用法 📍
GPSトラッカーの基本と種類
GPSトラッカーは、全地球測位システム(GPS)を利用して位置情報を特定し、その情報を共有するための機器です。災害時には家族の安否確認や、救助チームの効率的な動きをサポートします。
🔸 主要なGPSトラッカーの種類
- パーソナルGPSトラッカー
- 用途:家族・高齢者・ペットの位置確認
- 特徴:コンパクト、長時間バッテリー、SOS機能
- 価格帯:5,000円〜30,000円(通信費別)
- おすすめポイント:災害時の家族の居場所確認に最適
- 衛星通信型メッセンジャー
- 用途:携帯圏外でのメッセージ送信と位置共有
- 特徴:双方向テキスト通信、SOS機能、位置追跡
- 代表製品:Garmin inReach、SPOT X
- 価格帯:30,000円〜70,000円(通信費別)
- おすすめポイント:バックカントリーや災害地での救助要請に有効
- 車両用GPSトラッカー
- 用途:避難・救助車両の管理、盗難防止
- 特徴:リアルタイム追跡、動態管理、長期間記録
- 価格帯:10,000円〜50,000円(通信費別)
- おすすめポイント:災害時の物資輸送管理に有効
🔸 NERV防災アプリ(日本特化型)

日本では「NERV防災」アプリが注目されています。このアプリは気象庁からのデータをリアルタイムで受信し、地震・津波・火山噴火・気象災害などの警報を素早く通知します。位置情報を活用して、ユーザーの現在地に関連する災害情報のみを提供する機能が特徴です。
🔸 災害時のGPSトラッカー活用シナリオ
- 👨👩👦家族の安否確認
- 事前に家族全員にGPSトラッカーを持たせておく
- 災害発生時に各メンバーの位置を確認
- あらかじめ設定した避難場所への到着を確認
- ⛑️救助支援
- SOSボタンで緊急事態を通知
- 正確な位置情報により救助チームが迅速に到着
- 双方向通信で状況を伝える
- 災害ボランティアの活動管理
- ボランティアチームの位置をリアルタイムで把握
- 効率的な人員配置と安全管理
- 活動記録を自動的に残し、後の検証に役立てる
🔸 GPSトラッカー選びのポイント
- バッテリー持続時間:最低でも72時間以上持続するものを選ぶ
- 防水・防塵性能:IP67以上の防水・防塵規格を持つものがおすすめ
- 通信方式:携帯電話網に依存しない衛星通信型が災害に強い
- 使いやすさ:緊急時にもシンプルに操作できることが重要
- 月額費用:長期的な維持費も考慮して選択する
まとめ:災害時に備えた通信手段 🔄
災害時の通信手段は、単に持っているだけでは意味がありません。日頃からの訓練と、家族や地域での通信計画が重要です。
🔸 災害通信の基本原則
- 複数の通信手段を確保する
- 携帯電話、トランシーバー、衛星電話など異なる種類の通信機器を用意
- それぞれの長所・短所を理解し、状況に応じて使い分ける
- 定期的なテストと訓練
- 月に一度は全ての機器の動作確認を行う
- 家族や地域で実際に使用して、操作に慣れておく
- バッテリー・電源の確保
- 予備バッテリー、手回し充電器、ソーラーチャージャーなどを用意
- 各機器の消費電力を把握し、計画的に使用する
- 通信プロトコルの確立
- 家族間の連絡方法や合言葉を決めておく
- 簡潔で誤解のない情報伝達方法を確立する
🔸 最後に
通信手段は災害時の命綱です。本記事で紹介した機器を参考に、ご自身の生活環境や地域特性に合わせた通信計画を立ててください。何より大切なのは、機器に頼りすぎず、日頃からのコミュニケーションと地域のつながりを大切にすることです。
災害はいつやってくるか分かりません。「備えあれば憂いなし」の精神で、今日から防災通信の準備を始めましょう。
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